生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物を隔てるモノとは何か、というテーマに沿って丁寧に(私のような理系アレルギー者にもわかるように)書かれている。
本の後半、膵臓から消化酵素が消化管に分泌される際の、細胞膜の変化に関係するGP2と呼ばれるタンパク質に関わる研究の様子は、読みながら「で、どうなったの?」「へぇー」と独り言を言いつつページをめくった。
ベストセラーになるわけだ。


子供の頃の体験を綴ったエピローグで、トカゲの卵の話で締めくくったセンスに脱帽した。
好奇心にかられ孵化する前の卵の中を覗いてしまい、殻を接着剤で元通りにしてもトカゲは生まれてくることなく溶けてしまった。
この体験が今でも澱となって残っているそうだ。


”私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである。それは実のところ、あの少年の日々からすでにずっと自明のことだったのだ。”


こういう諦観を持っている人が、あえて本来操作してはならない領域に介入しているということが面白いと思う。
というか、生物とは何かを突き詰める過程で、イヤでも悟らざるを得ないということなんだろうか。