ブラフマンの埋葬

ブラフマンの埋葬

ブラフマンの埋葬

息子が学校で借りてきたので読んでみた。
博士の愛した数式」の感動を味わおうとした息子は、いまひとつの読後感だったようだが、この大人の童話のような物語を私は結構気に入ってたりする。


主人公のもとにある日訪れた小動物ブラフマン。最後まで何の動物なのかわからない。
登場人物の年齢や容姿やその他の詳細なバックグラウンドもわからない。
想像力を駆使して脳内で絵にしていく作業が楽しい。これこそ読書の醍醐味なのかもしれない。


ブラフマンをいかに愛しているかというような言葉は一切ないのに、淡々とした表現の中に切ないくらいの愛をひしひしと感じることができる。箇条書きの観察日記みたいな事務的な文章の一語一語にさえ愛おしさがあふれている。
ブラフマンの澄んだ瞳の対極に、主人公が思いを寄せる娘がいて、人間臭い現実感を象徴している。時々無造作に物語に割り込んできて、不快感さえ引き起こす。


タイトルで想像できるように最後はブラフマンの死で終わるのだけど、主人公が号泣することもなく淡々と儀式のみが描かれる。でも主人公の心の痛みがしみてくる。
小川洋子の感性がしみてくる。