汝ふたたび故郷へ帰れず

汝ふたたび故郷へ帰れず (小学館文庫)

汝ふたたび故郷へ帰れず (小学館文庫)

第25回文藝賞受賞作。


飯嶋和一の作品を読んだのは『始祖鳥記』に続き実はこれが2作目。
そんでミクシィの飯嶋コミュに入ってるってどうなんかな、と思うけど。
まいっか。(口癖)


恵まれた体躯と才能を持ちながらも、アルコールに溺れリングを去ったボクサー。生まれ故郷の南の島への帰郷、ジムの会長の死、そして彼を影になり日向になり支え続けてきた人々との交流を経てボクサーとして人間として見事に再生する。
まぁありがちなというか"ベタ"ではあるストーリーなのだけど、町の風景、島の風景が主人公のフィルターを通して丁寧に表現されてて、その時々の心情が痛いほど伝わってきてどっぷり引き込まれてしまう。


『始祖鳥記』のレビューでも書いたのだが、主人公を支える人たちの純粋さとか聡明さとか素朴さが実に気持ちいいのだけど、その人物たちの背景までは見えてこないというのが残念な点。あえてそこまでは深く書かずに主人公だけにスポットライトを当てているのかもしれないけど。
でも読後に素晴らしい爽快感を得られる良い作品。