隠された風景―死の現場を歩く

重いテーマである。
読み終わったあと、泣きたい気持ちになる本である。
でも多くの中高校生に読んでもらいたいと思った。

捨てられたペットの処分場、食肉加工処理場、そして自殺者の遺書。いずれも現在の日本人の目からは逃避させられているダークサイドである。
毎日新聞の記者である著者がこれらの現場を訪問し、困難な取材を続けながら連載した。

ペットブームが続く中、捨てられて処分される犬猫は年間100万匹近くにも上るという。ルポの中ではこうした犬猫が炭酸ガスが充満する部屋で殺され焼却炉に焼かれる様子がリアルに書かれている。
「かわいそう」と思うだろう。自分は絶対にその処分はできないと言うだろう。処分せずに放置しておいたらどうなるか、本当は理解しているくせに「かわいそう」という。
犬猫たちの死によって実現された快適さを享受しつつ「かわいそう」という言葉で自分を肯定しようとしている。
著者は清潔でキレイな世の中で、人の目に触れないほど遠くに押しやられている多くの「死の現場」を真正面から見据えて、その「死」から繋がっている「命」の尊さを語る。