14歳

平成4年1月10日。
出産予定の日になっても一向に兆しが現れないので、長男のときと同じに陣痛促進剤のお世話になることになった。


「2人目だから、すぐ生まれるからね。もう分娩室に行っとこうか。」


って先生は言ったのに、ちょっと頑固な便秘レベルの痛みが時おりあるだけで、本格的な陣痛がこない。
「もう今日は生まれるよ」
「いい加減今日は出てくるでしょう」
って毎日言われ続けたけど、結局、分娩室に6泊して、あとから入院してきた妊婦さんの出産にことごとく立ち会ってしまった。


謎の高熱を出し、ほとんど食べられず点滴でのみ栄養を取った。
トイレに向かってゆらゆらと歩く私は、おそらく矢吹丈との試合前の力石徹のようだったに違いない。
笑気麻酔のせいで若干ラリってたし。


1週間目の朝、先生が外来を終えたら帝王切開にしましょうと看護士さんに告げられたとき、陣痛らしきものがきた。
やっと出てきた娘の体重は3954グラム。
髪の毛はもっさりと生え、爪も伸び、生まれたばかりだというのに分娩室中に響き渡るほどの大きな音を立てて激しく指しゃぶりをしている。
初めて母乳を与えると、乳房をわしづかみにし、乳がしぼんでしまうんじゃないかってくらいの力強さで吸ってきた。
1週間の分娩室でのサバイバルのおかげで憔悴しきっていた心と体が、憎らしいほどのその力強い娘の生命力で一気にしゃきっと蘇った気がした。


ていうか、これ本当に新生児?


…ってくらいがっしりしていて、新生児室に並んだ赤ちゃんの中でひときわ異彩を放っていたうちの娘。
「わぁ、おっきいねー、この赤ちゃん」
って、お見舞客さんにかならず言われてどよめきが起こっていたから、母さん思わず他人のふりをしちゃったよ。


そんな娘も今日で14歳。
私の身長を抜いてすでに2年。
…上から見下ろすんじゃねぇ。


最近、娘のお古をいただくようになりました。(感涙)