博士の愛した数式

博士の愛した数式

博士の愛した数式

事故のために1975年以降の出来事は80分しか記憶できないという障害を負ってしまった数学者と、若くして未婚の母となった家政婦とその10歳の子供ルート(√)の交流を描く。

80分の出来事しか記憶に留めておくことができない博士は、他人と初めて会うときには必ず誕生日や靴のサイズを聞き出すことから始める。そしてその数字に秘められた法則を見つけ「美しい」と賞賛するのが博士の他人との唯一の交流手段なのだ。
博士の数字にまつわる説明を聞いていると、腕時計の製造番号と家政婦の誕生日の数字が「友愛数」という関係にあることがとても美しいと本気で思えてくる。


「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。なにものもそれを邪魔できない」


メモだらけの背広を着て、カビの生えた靴を履き、ふけだらけの頭をかきむしる博士は明らかに異端ではあるが、彼の頭の中には美しい数式の世界が広がっている。それを誰よりも理解した家政婦とルートの限りない優しさが胸に染み入る。ささくれた心を暖かく包み込み優しくさせてくれる本。
映画化される(された?)らしいので、これも見てみようと思う。