禁じられた敵討

禁じられた敵討 (文春文庫)

禁じられた敵討 (文春文庫)

幕末から明治にかけての風雲の中、様々に斃れていった男たちの物語の短編集。


白虎隊が飯盛山で自刃して果てた日よりも23日前、わずか13歳から14歳の少年たちが戦死者16名の犠牲を出しつつ薩摩の兵に果敢に立ち向かったという"二本松少年隊"の物語「木村銃太郎門下」。
指揮したのは韮山の江川太郎左衛門に洋式砲術を学んだ木村銃太郎。木村の穏やかで理論的な指導により、少年隊は実戦において奮迅の活躍を見せるが、薩摩の圧倒的な兵力に勝てるわけもなかった。
戊辰戦争における会津を中心とする東北諸藩の対応は、本当に不器用としかいいようがなく、幼い命を犠牲にしたことは腹立たしくもあるのだけど、「武士たるものいずれは戦場に出るもの」と教えられてきた少年たちの最後まで武士たらんとする姿には、当時の諸藩ですでに廃れてしまっていた武士道が、この東北の地では確実に受け継がれ純粋培養されていたことを物語っている。


実は中村彰彦氏の作品を初めて読んだ。
マニアックともいえる、歴史に埋もれた、小さいけれど人間味あふれる事実を掘り出す情熱は素晴らしいと思う。