観光都市 江戸の誕生

吉宗による観光振興政策や、財政困難の解決法として”出開帳”を行っていた地方の寺社とその会場となった寺社の周辺で繰り広げられる見世物や飲食店との経済相乗効果など、当時の日記等の資料を交えながら、大都市江戸の観光事情をわかりやすく解説する。


現在も人気を集める成田山新勝寺が全国区に飛躍していく様子は興味深い。
成田村の領主であった佐倉藩の歴代藩主の帰依を受け勢力を拡大していった新勝寺が、本堂の建立に際して抱えた膨大な借金を返済する手段として、江戸深川で出開帳を行い大成功を収めたことから始まった。
やがて、佐倉藩主稲葉氏、将軍綱吉の生母桂昌院や、歌舞伎界、花柳界、紀伊国屋文左衛門ら大商人からの強力なバックアップを得て、”成田ブランド”を確立していく。
開帳に合わせた初代市川団十郎による舞台は、現代のメディアミックスに通じるものがある。


日本人のレジャー行動の特徴は、買い物と飲食が必ず付随することであるという。なるほど日本各地の観光地が猥雑なわけだ。
日本人の商魂の逞しさの原点を見た気がする。