おわりの雪

田久保麻理さんの訳はもちろん素晴らしく、大変きれいな日本語には感動するのだけど、おそらく原書で読むと、おそろしく美しい言葉で綴られているのだと思う。フランス語を解さない自分がちょっとだけ悔しくなった小説。
主人公の少年時代の回想という形で語られる。
「生きていく人間の苦悩」を身体全体で受け止める少年の姿は、いわゆる「無垢な子供」ではなく、その生活感と共に生々しくはあるのだが、真に純粋で透き通っている。
彼が暮らす狭い空間の、音や光の描写と少年の心理がシンクロし、苦しいくらい切なくなるが、読み終わったあとに清々しい気分にもなる。


ふと、小学校低学年の頃に学校の映画会で見た「赤い風船」という古い映画を思い出した。
赤い風船と少年との交流を描いた映画。(はるか昔のことなので、詳細は思い出せないが)
最後に風船がシワシワになっていたところで、どうしようもなく悲しくなった自分がよみがえった。

そんな感じの小説。